「恥の多い生涯を送ってきました」
印象的なこのフレーズで始まるのは太宰治の『人間失格』です。
太宰治は自分の人生の大部分を投影してこの作品を書いたと考えられており、随所に太宰らしい厭世観が伺えます。
私は中学生の頃から何度も読み返している本ですが、何とも言えず癖になる本です。
この「恥の多い生涯を送ってきた」という言葉の真意は何なのか、私たちとどのように関係しているのかについて詳しく掘り下げていきます。
人間失格のあらすじを簡潔に
まず、『人間失格』のあらすじを簡単にご紹介します。この作品は、主人公である大庭葉蔵が、自身の人生を振り返って綴った手記をある男が読み進める形式で展開していきます。葉蔵は幼少期から他人と馴染めず、社会に適応できない自分を隠すために「道化」を演じます。
心の中で自分は他者とは違うという不安を抱えつつも、自身の「道化」によって周りの人間と上手く付き合う方法を覚えていく葉蔵。
しかし、次第にその生き方は破綻を迎え、酒や女性関係、薬物に溺れていく中で、次第に人間としての尊厳を失っていきます。太宰治自身の人生と重なる部分が多く、読む者の心に深い印象を残す作品です。
恥の多い生涯を送ってきましたの意味
私もこの言葉を初めて読んだとき、心に刺さるような衝撃を受けました。太宰治の代表作『人間失格』の冒頭に登場するこの一文は、多くの人にとって印象的ではないでしょうか。
「恥の多い生涯を送ってきました」というフレーズを聞くと、まず感じるのは主人公“大庭葉蔵”の深い自己否定です。彼は自分の人生を振り返りながら、失敗や過ち、孤独感を恥として捉えています。ここでいう“恥”とは単なる失敗の記録ではなく、社会的な孤立や自己評価の低さを象徴しているように思います。
作品の最後、京橋のバーのマダムが「あの人のお父さんが悪いのですよ」と語っていますが、郷土の名士である厳格な父のもとで育てられたことも葉蔵の人生観の大きな影響を与えているように感じます。
周りの人間に対して常に気を使って、「道化」を演じておきながらその人間の心の内が分からない、共感できない。そして自分は堕落の一途をたどった…そんな意味合いがある言葉だと思います。
さらに付け加えるなら、この言葉にはある種の誇張と他者へのアピールが見て取れます。葉蔵は人間や社会に絶望を抱きながらも、「道化」を演じることでつながりを持つことができた。そんな自分の人生の軌跡を脚色して他の人に見てほしい、知ってほしい、そんな思いで書かれた言葉なのかなとも感じます。

作品を読めば読むほどいろんな意味が見えてくるね。
恥の多い生涯を送ってきましたの背景
この言葉の背景には、太宰治自身の人生経験が強く反映されていると言われています。
物語の主人公大庭葉蔵はもちろんフィクションのキャラクターですが、明らかに現実の太宰治を投影させた登場人物です。太宰は酒や薬物、恋愛の失敗など、自分を取り巻く環境や内面的な葛藤に悩み続けました。これが『人間失格』という作品に投影されているのでしょう。
日常で感じる恥の意識に向き合う
では、この「恥の多い生涯」という言葉を現代の私たちの視点から考えると、どう解釈できるのでしょうか? 私たちも時には失敗や挫折を経験し、そのたびに自分の価値を疑ってしまうことがあります。でも、その“恥”と向き合うことが、成長や自己理解への第一歩になるのではないでしょうか。
たとえば、仕事で大きなミスをしてしまったとき、友人との関係がうまくいかないとき、あるいは自分の夢が思うように進まないとき…そういった瞬間に感じる“恥”は、大庭葉蔵が抱えたような孤独感や無力感と重なる部分があるかもしれません。でも、その経験をどう活かすかが大切です。
『人間失格』の中で描かれる“恥の多い生涯”は、決して主人公だけの特別なものではありません。誰もが自分の中に“恥”を抱えて生きているからこそ、この言葉が多くの人の共感を呼ぶのだと思います。
最後に、私がこの名言から学んだことをシェアしたいと思います。それは、自分の“恥”を否定するのではなく、それを受け入れて次の一歩を踏み出す勇気を持つことです。葉蔵は「道化」を演じることに絶望し破綻した人生を送っていったわけですが、私たちはそれを自分の中で受け入れ消化して日常を歩んでいくことが必要です。
『人間失格』をまだ読んだことがない方は、ぜひ手に取ってみてください。この「恥の多い生涯を送ってきました」という言葉が、あなたにとってどんな意味を持つのか、きっと考えるきっかけになるはずです。
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