社会が複雑になった現代における人間の悩みも、実は古代からあまり変わっていないのかもしれない。
そんな示唆を与えてくれるのが古代ギリシアの哲学です。
実際に多くの著名人や成功者たちが古代の思想を取り入れて、血の通った自分の哲学へと昇華させています。
今回はそんな古代ギリシャの哲学の中でも「ストア派」と「エピクロス派」という2つの思想について、共通点や違いをわかりやすくお話しします。この2つの哲学は、異なる視点を持ちながらも、現代の私たちが人生をよりよく生きるためのヒントを与えてくれます。
ストア派とは?
ストア派は、紀元前3世紀ごろゼノンによって創始された哲学で、「理性」と「徳」を重んじます。彼らは、人生で直面する苦難や感情を理性でコントロールし、心の平穏を保つことが重要だと考えました。特に「コントロールできるもの」と「できないもの」を明確に区別し、できないものについては受け入れるという思想が特徴的です。
この思想を極めたゼノンは航海中に大嵐に襲われ、屈強な船乗りたちが慌てふためく中でも全く心を乱さなかったと伝えられています。
流石に嵐にあった際は動揺すると思いますが、この姿勢は見習う点が多々あります。
例えば、仕事で失敗したときただ落ち込むのではなく「過去を変えることはできないが、未来に向けて何ができるか」を考える姿勢は現代でも非常に実用的です。
この点は以前も紹介したアドラー心理学の「課題の分離」と共通する考え方だと思います。
課題の分離をマスターするためのトレーニングとコツ:できない人へのアドバイス>>
エピクロス派とは?
エピクロス派は、同じく紀元前3世紀にエピクロスが提唱した哲学で、「快楽」を追求することを目標とします。ただし、この快楽は一時的な享楽ではなく、身体的な苦痛を避け、精神的な平穏を追求するものです。質素な生活や友人との交流、恐怖や不安の克服がその中心にあります。

エピクロスってひたすらに快楽を追い求めた人じゃないの?
確かに現代語で「エピキュリアン」といえば動物的な快楽にふける人たちを表す言葉となっていますが、これは当時エピクロス派の哲学者たちに対して寄せられた根拠のない批判がもとだと思われます。
実際は魂の平穏=アタラクシアを目指すというのがエピクロス派の教えであり、例えば、忙しい日常の中で大きな成功を目指すよりも、小さな幸福を見つけることがエピクロス派的な生き方といえます。
ストア派とエピクロス派の共通点と違いを分かりやすく
ストア派とエピクロス派の共通点と違いについて表で整理してみました。
項目 | ストア派 | エピクロス派 | 共通点 |
---|---|---|---|
目的 | 理性と徳による心の平穏を得る | 快楽(精神的平穏)を追求する | 心の平穏を重要視する |
方法 | 感情を理性で制御し、現実を受け入れる | 欲望を抑え、質素な生活を送る | 欲望をコントロールし、過剰を避ける |
幸福の定義 | 内的な徳と理性による幸福 | 恐怖や不安を取り除いた穏やかな状態 | 内面的な平穏が幸福の鍵 |
対処法 | コントロールできないことを受け入れる | 必要以上の欲望を持たない | 不必要な感情や行動を排除する |
人生の指針 | 他人や環境ではなく、自分の内面に焦点を当てる | 自然に従い、身近な喜びを見つける | 外的要因ではなく、内面的充足を重視する |
このように、ストア派とエピクロス派は「心の平穏を追求する」という点で共通しているものの、そのアプローチや哲学的な前提には大きな違いがあります。
ストア派は理性と徳を重視し、感情を制御することで平穏を得るのに対し、エピクロス派は不必要な欲望を抑え、シンプルな生活を送ることで幸福を追求します。
両者の思想に違いはあるのですが、どちらの思想も私たちが取り入れることでストレスを軽減したり不要な感情で心を惑わされるのを防いだり、幸福を日々に感じることができるなどたくさんのメリットを享受できると思います。

人間の基本的な性質は古代から変わっていないから学ぶべき点がたくさん。
ストア派における禁欲主義の意味とは?
ストア派はよく「禁欲主義」と結びつけられますが、これは宗教的な修行のようにすべての欲望を否定して枯れ木のようになれ!と説いているわけではありません。
その本質は「理性に基づき、無駄な欲望を制御すること」です。つまり、重要なのは自分にとって本当に価値のあるものが何かを見極めることです。
例えば、現代では「もっと稼ぎたい」「もっと良いものが欲しい」という欲望が尽きない人も多いですよね。しかし、ストア派の考えでは、こうした終わりのない欲望を追い続けるのではなく、必要なものだけに焦点を当てることで、心の平穏を得ることができるとされています。
ストア派の禁欲主義は物質的なものに執着しないだけでなく、感情的な波乱を避けるための「心の断捨離」と言えるでしょう。これは、ミニマリズムやマインドフルネスにも通じる考え方です。

モノがあふれる現代だからこそより重要性が高まっている思想と言えるね。
現代における活用法
これまでも触れてきたように両派の哲学は現代人にも大いに役立ちます。具体的にはそれぞれの教えを以下のように活用してみてはどうでしょうか。
1. ストア派:コントロールできることに集中する
たとえば、仕事で大きなトラブルに直面した場合、ストア派の教えに従えばコントロールできるものとできないものを見極めて自分にできることに集中します。
現実問題としてコントロールできないものを何とかしようとしても時間の無駄ですし、精神的な負担もかなり大きくなってしまいます。
過去の失敗や他人の反応に執着せず、未来への準備に時間を使う姿勢はストレス軽減に大いに役立つでしょう。
2. エピクロス派:身近な喜びを見つける
エピクロス派の哲学は、普段は忘れてしまいがちな日常の小さな楽しみに目を向けることを教えてくれます。
たとえば、友人と穏やかな時間を過ごしたり家でおいしい紅茶を楽しむことはエピクロス派的な「快楽」に当たります。
インスタで見かけるような煌びやかな生活にあこがれるだけではなく、日常生活の中で小さな幸福を再確認することで人生の豊かさの総量が上がると思います。
3. 両者のいいとこどりをする
現代のあわただしい生活の中では、ストア派とエピクロス派の哲学をバランスよく取り入れるのが賢明です。
たとえば、ストア派の理性で仕事の問題を冷静に処理しつつ、エピクロス派の考え方で日常の小さな幸福を大切にすることで小さなことにも感謝し幸福を感じられるでしょう。
このように哲学を学ぶことで、現実の問題に対処しながら心の中に幸せな部屋を作ることができると私は考えています。
最後にストア派の名言から
最後にストア派の哲学を象徴するマルクス・アウレリウスの名言をご紹介します。
「あなたの人生は、あなたの思考が作り出すものだ。」
この言葉は、私たちの内面の考え方次第で人生をどのようにも変えられることを教えてくれます。
私たちはどうしても人生を物質的な側面からのみ考えがちですが、私たちの思考や心によって世界を解釈しているだけです。そしてその解釈はいつでも前向きにアップデートができるんだということを覚えておきましょう。
【何かのサイン?】嫌なことが続くときの対処方法と根本原因について話します>>
ストア派の哲学書ならAmazonオーディブルがおすすめ
ストア派の思想をより深く学びたい方におすすめの書籍として以下の2冊をご紹介します。
- マルクス・アウレリウス『自省録』
ストア派の中心的な思想が詰まった名著で、日常生活に役立つ哲学的な考え方を学ぶことができます。 - セネカ『人生の短さについて』
人生をどう充実させるかというテーマについての実用的なアドバイスが詰まった一冊です。
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ストア派の教えをぜひあなたの生活にも取り入れて人生をアップデートしてみてください。
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