他人の行動や感情に振り回され、自分の心が疲れてしまった経験はありませんか?アドラー心理学で提唱される“課題の分離”は、そんな悩みから解放されるための強力なツールです。
しかし、頭では分かっていても実際にはなかなか実践できない人も多いのではないでしょうか。
この記事では、アドラー心理学の課題の分離を上手に実践するためのトレーニング方法やコツ、そして“できない人”が陥りやすいポイントとその克服法について、具体例を挙げながら解説します。
そもそも課題の分離とは?
まず、課題の分離について簡単におさらいしましょう。課題の分離とは、アドラー心理学で提唱されている概念で、問題や状況において“誰の課題か”を明確にし、自分の課題に集中することを指します。
他人の課題に干渉しすぎたり、自分の課題を放棄してしまうことは、人間関係のストレスや摩擦を生む原因になります。
たとえば、次のようなシーンを考えてみてください。
- 子どもが宿題をしないことに親がイライラする
- 職場で同僚が仕事をサボっていることが気になる
- SNSで自分の投稿に対する他人の反応を気にしすぎる
これらはすべて、他人の課題に踏み込みすぎてしまうことで発生するストレスです。課題の分離では、他人の課題に干渉せず、自分がコントロールできることにフォーカスすることが重要です。

自分の課題と他者の課題を明確に切り分けて考えるのが「課題の分離」なんだ。
課題の分離で得られるメリット
課題の分離をマスターすることで、次のようなメリットが得られます。
- ストレスの軽減:他人の行動や感情に振り回されなくなる。
- 人間関係の改善:お互いの役割を尊重し、健全な距離感が生まれる。
- 自己成長:自分の課題に集中することで、主体的な行動が増える。
課題の分離を身につけるためのトレーニング
課題の分離を実践するには、日々の中で意識的に練習を重ねることが大切です。以下のトレーニング方法を取り入れてみましょう。
1. “誰の課題か”を問いかける習慣をつける
日常のあらゆる場面で、「これは誰の課題だろう?」と自問する習慣をつけましょう。
トレーニング方法
- 一日の終わりに、その日経験したストレスを振り返り、誰の課題だったのかをリストアップする。
- 自分の課題ではないと判断したものは、「手放すリスト」として記録し、意識的に切り離す練習をする。
2. 自分がコントロールできる範囲を明確にする
課題の分離を難しく感じる人の多くは、自分の課題と他人の課題の境界が曖昧です。
トレーニング方法
- 紙に「コントロールできること」と「コントロールできないこと」を書き出し、それぞれのリストを見比べる。
- たとえば、「自分の行動」や「自分の考え」はコントロールできるが、「他人の感情」や「他人の評価」はコントロールできない、と認識する。
3. マインドフルネスを取り入れる
課題の分離には、冷静で客観的な視点が求められます。マインドフルネス瞑想は、その視点を養う効果的な方法です。
トレーニング方法
- 毎日5–10分、深呼吸をしながら「今ここ」に集中する時間を持つ。
- 瞑想中に浮かんでくる悩みや感情を、「これは私の課題それとも他人の課題?」と問いかける。
課題の分離を実践するコツ
トレーニングと並行して日常で役立つ以下のコツを意識すると、課題の分離がスムーズに進むようになります。
1. 「自分の役割」を明確にする
仕事や家庭、友人関係など、場面ごとに自分の役割を意識することで、他人の課題に踏み込みすぎるのを防ぎます。
コツ
- 親として「子どもの教育を支援する役割は果たすが、選択は子どもに任せる」。
- 上司として「部下に指示を出すが、実際の行動は部下の責任」。
2. 他人に“NO”を言う勇気を持つ
他人の課題に巻き込まれる原因の一つは、「断れない性格」です。他人の期待に応えすぎず、自分の時間やエネルギーを守ることが大切です。
コツ
- 「それはあなたの問題ですね」と、柔らかく伝える練習をする。
- すぐに答えを出さず、「少し考えさせて」と時間を取る。
3. 感情に流されない
怒りや不安は、他人の課題に干渉するきっかけになります。感情を一歩引いて客観的に見る習慣をつけましょう。
コツ
- 強い感情が湧いたときは、一度深呼吸をしてから行動する。
- 「自分が今感じているこの感情は、他人の課題に影響されていないか?」と問いかける。
課題の分離ができない人が陥りやすい罠と克服法

頭ではわかっていてもすぐイライラするんだけど!!
このように課題の分離を実践しようとしても、うまくいかない人も多いと思います。その原因と克服法を見ていきましょう。
1. 他人の課題を「自分の責任」と思い込む
原因
- 親切心が強すぎて、他人の課題に過剰に責任を感じてしまう。
- 他人の評価を気にするあまり、課題を引き受けてしまう。
克服法
- 他人の課題を「解決する責任があるのはその人自身」と自分に言い聞かせる。
- 「助ける」と「代わりにやる」の違いを明確にする。
2. 境界線を引くのが苦手
原因
- 自分と他人の境界が曖昧なため、課題を分ける基準が分からない。
- 他人の顔色をうかがってしまい、どんなことも受け入れてしまう。
克服法
- 境界を引くためのルールを作る。たとえば、「自分が影響を与えられる範囲だけに集中する」と決める。
3. 「冷たい人」と思われるのが怖い
原因
- 他人の課題に干渉しないことで、関係が悪化するのではないかという不安。
- 周りの人全員に好かれていないと生きていけないと思い込んでいる。
克服法
- 課題を分けることは相手を尊重する行為だと理解する。
- 実際に「冷たい人」と言われた場合は、「相手の課題」と割り切る。
まとめ
課題の分離は、人生をより自由で豊かにするための重要な考え方です。最初は難しく感じるかもしれませんが、トレーニングとコツを実践することで、少しずつ身につけていくことができます。
「これは誰の課題か?」と自問することを習慣化し、他人の課題を手放す勇気を持ちましょう。それが、心の余裕を生み出し、自分らしい人生を歩む第一歩です。今日から少しずつ、課題の分離を意識してみませんか?
アドラー心理学に興味がある方には「嫌われる勇気」をおすすめします。対話形式で書かれているので非常に読みやすい本です。
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